日付が変わって、26日。
もう数時間が過ぎた早朝。
季節柄外はまだ暗くて、空気が冷えてシンとしている。
咲斗は慎重にそっとドアを開けて、中に体を滑り込ませた。
室内は思いのほか冷えていて、
響が帰宅してからすばらく時間がたっていることが伺えた。
---お?珍しい。
リビングに足を踏み入れると、どうやら響が脱ぎ散らかしたらしい服がソファにそのままになっていた。
---だいぶ飲んだ、かな?
それはお互い様だけれど、響が外でハメを外すくらいかもしれない量を飲んでいるのを想像するのは、少し痛い。
咲斗は自分のコートとスーツの上着を同じようにソファの背にかけて、寝室のドアを開けた。
ベッドにはそこに人がいるのがわかる盛り上がりで、スースーと寝息も聞こえる。
咲斗はそっとベッドに忍び寄って、肩まですっぽりかぶった布団をめくった。
---ふふ
甘い笑みが漏れ、そっと咲斗の指先が響の頬に触れる。
---ん!?
リビングから漏れる明かりの筋に、響の首元が照らされると、そこに見知った赤い印。
でもこれは、自分がつけたものじゃないと咲斗は確信があった。自分もそうしたけれど、仕事のことも考えてこんなにあからさまに見えるところにはつけない。
---なに、コレ。
「・・・響?」
咲斗は声に出して響の名前を呼ぶ、少しばかり不穏な空気をはらんだ声で。
けれど、響の寝息は乱れない。
「響」
もう少し大きな声で呼ぶ。
「響」
「ん・・・」
「響?」
起こしている自覚はあるけれど。
「あー・・・さきと、さん・・・かえりーんー」
「ねぇ、響?」
「あー」
残念ながら響のまぶたはほとんど開かないままに、布団の中からにょきっと2本の腕が出てきて、咲斗の首にぎゅっと巻きついた。
「響!?」
「まだ寝るー・・・」
「わわっ」
ぐぐっと引っ張られて、咲斗の体が中途半端にベッドに上がる。響はというと、またスースーと寝息を立てだしてしまった。
---響~
腕を緩めようにも、がっちり掴まれたのか、中々外れない。
---・・・リビングの電気つきっぱなしだけどなぁ。着替えても無いし。
でもまぁ、そうなったのも響の所為だし、怒られたって知らない。
---いいか
咲斗は、中途半端に上っていた体をさらにしっかり進めて、響の横に収まった。
たまにこう、腕の中に納まる感じで眠るのも悪くないと思いながら、明日の朝はどうやって響にお仕置きしようか考えながら、眠りについた。
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