午前の講義がやっと終わって、剛は"んー"っと伸びをして立ち上がった。
朝が物足りなかったから、お腹が猛烈にすいていた。
昼はがっつり食べよう。じゃないと、バイトが持たない。
-----今日の日替わりは何だろう。
ボリューム満点なものだったらいいけど。
剛は階段を降りながらポケットにしまっていた携帯を、なんとはなしに取り出した。
----お?
メールが来ている。
確認して、剛の顔に笑みが広がっていく。それも、とびきり甘い。
「剛、お前何にやけてんだよ、彼女からかぁ?」
数歩前を歩いていた友人が振り返って、思わず冷やかす程。
剛は無視してもう一度読み返してから、覗きこもうとする友人の目から隠す様に携帯を仕舞う。
「なんだよ、見せろよ」
笑ってからかう友人を軽く睨む。
でもその顔さえ笑っているのが自分でもわかった。
由岐人は、最近朝起きて来ない日がある。ぐっすり寝ていて、剛が少し動いたくらいじゃあ気付かない程に安心して、深い眠りに落ちている。
今朝もそうだった。
そんな日は味噌汁を作って、手早く出汁巻き卵のようなオムレツのようなものを作って、一人で朝を食べる。ただ、味噌汁だけは二人前、由岐人の分も作っておく。
それでも由岐人は起きてこない。
前なら気配で起きた。
前なら起きなきゃという気持ちが勝っていた。
前はもっと、気を張っていた。
それが最近では、ずっと自然で、当たり前のように寝坊したりする。
腕の中で、深く安心しているように寝ている。
それが、自分にとってどれだけ嬉しいか。
そして、最近は由岐人が、いつのまにかご飯のお供になる、フレークやふりかけ、食べるラー油を買っておいていたりする。
何も言わないで。
そんな由岐人を、どれだけ愛おしいと思っているか----------
------ああ、なんか今すぐ帰って顔が見たくなっちまう。
"味噌汁、67点。
カレー、作っておいたから。"
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