桜の花びらが、ふわりと舞い落ちた。
響は、どこに桜が?と上を見上げて回りを見渡したけれど、桜の木が見えない。けれど、風に乗せられたのか、桜の花びらだけが、響の上からハラハラと舞い降りた。
淡い、ピンク色。
-----もう、終わっちゃうんだなぁ。
毎年見れるけれど、なんとなく、いつも寂しい様な気持ちになってしまう。
響は、止めていた足を再び動かして、歩き出す。
それにしても、と思う。
-----咲斗さんはなんであんなにヤキモチ妬くんだろ。
女のお客さんに、お花見の飲み会に誘われただけ。もう、やんわり断る術も身につけているのに。
-----大体自分はお客と、花見に行ったくせに。
「はぁ~あ」
折角のお休み。
一緒に散歩したかったのになぁ。
本当に、キライだ。
「--っ」
ブブブブ・・・と、携帯バイブが鳴る。すぐに止んだから、メールらしい。
響は一瞬の躊躇の後、携帯を確認する。
"咲斗"
やっぱり、と思い。
許してやらない、と思う。
それなのに。
「----もうっ」
ずるい。
本当に怒っていたのに。
響は携帯をポケットに突っ込んで、再び歩き出した。
その足が、少しづつ早足になっていく。
”ごめん。
帰って来て。
寂しい"
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