春なのにいつまでも寒くて、はらりと雪が舞った。空を見上げれば、どんよりとしている。
小城は窓を閉めて室内に戻る。
洗濯はやはりお預けになりそうだ。
高崎はまだ部屋から戻って来ない。
パソコンで業務連絡の確認をしているのだろう。もしかしたら従業員から相談メールでも届いているのかもしれない。
最近のこの不景気で、この仕事も中々しんどい。
思ってたより手っ取り早く稼げないと嘆く新人や、客の取り合い、些細な喧嘩、嫉妬、ツケ取りの失敗、客との恋愛に借金、相談事は尽きない。
高崎の事だから真面目に返事をしているのだろう、その光景が目に浮かぶ。
-------ふぅ
小城はソファに、どかりと腰を降ろした。
テレビは相変わらずつまらない。こちらも不景気だからか、通販番組ばかり。
-------暇だ。
テレビを消したら、部屋はシンと静かになった。
小城は携帯を手にして数秒考えてからメールを送った。 きっとすぐ足音がする。
そして怒られる。
ほんの5分先の未来を想像して、小城はふっと頬を緩めた。
「手を切った、血が…」
我ながら、嘘くさい。
PR