その日の剛は、朝からかなり慌しい日だった。とりあえず講義が朝1から入っているのだ。こういう日、剛は由岐人を起こさないようにそっと起きるのに気を使う。
なぜならこの可愛い恋人(剛談)は、気配にとっても敏感で剛がベッドから抜け出したら直ぐに気づいてしまうのだ。
ベッドがギシっと鳴らぬよう、布団が動いてしまわないようにそっとそっと抜け出す。
床に足をつけて振り返ると、おもむろに振り返る。
-----よしよし。
剛は由岐人の瞼が開いてない事を確認して、抜き足差し足でそっと寝室から抜け出した。
そしてすり足駆け足で洗面所に入って、顔をザバザバ洗う。暦は秋とはいえ、まだ水で十分な剛は水で目を醒まし、そのまま髪をセットして歯を磨いて洗面所を飛び出す。
「あ・・・、なんだよ。またお起こしちゃったのか」
すり足駆け足でリビングダイニングへ向えば、由岐人が起きてなにやら作っている。
そこで今回も由岐人を起こさずに出かける、という事が失敗してしまったことを知る剛なのだが、大体にして目覚まし代わりにセットしている携帯の振動で起きてしまっている、という事には気づいていないらしい。
「何作ってんの?」
デニムパンツに履き替えながら問いかけてみても、由岐人から返事が無い。どうやらまだ思考は起きていないらしい。
が、これで”もういいから寝て来いよ”なんて言おうものならえらい事になるのは学習済み。
”人が折角起きて作ってるのに何!?”と睨まれ怒られ、不貞腐れられる。だから剛は由岐人のしたいようにさせることにしていた。
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