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電車に揺られて乗り換えて、剛は1限目開始ギリギリに滑り込んだ。
室内を見ても、眠そうなけだるそうな空気が漂っている。その室内を見渡していると、前で友人--高遠--が軽く手を上げた。剛はそれに目で合図を送って、欠伸ひとつした後前を向き直った。
「剛」
講義が終わった途端高遠がやってきた。
高遠は大学に入ってから知り合ったヤツで、剛の1コ上だと言っていた。柔和な見た目と、短く切った髪がいい具合にアンバランスで、誰だったか女の子が”成宮っぽい!”と言っていた。
「よ。次、キタ館だろう?」
移動しようぜ、と立ち上がった剛に高遠は大きな口をニっと上げて、
「次休講だぜ。掲示板見てこなかったのかよ」
「マジ?ん~だよ、そうなのかよ。俺今朝は滑り込んだからなぁ」
「下のカフェでお茶しようぜ。で、神谷サンのノート見せて」
神谷とは、本日3限目に講義のある先生の名前。
「はぁ?----じゃあカフェオレ奢りな」
そういえば、前の時高遠は休んでいたかもしれない。
「~~~わかった、手を打とう」
背に腹は変えられない高遠はそう言うと、剛をせかすように歩き出した。
ふと外に目をやれば、11月に入って寒くなってきた所為か、外で座っておしゃべりをしたりお茶を飲んだりしている生徒の姿は見なくなっている。
長かった残暑も、短かった秋も終わりという事か。
カフェもぼちぼちの混み具合だ。その中で高遠は器用に窓際の席を見つけ、いち早く座った。
「あ、俺はホットミルクティーで」
と、高遠は財布を差し出した。どうやら剛に買いに行け、ということらしい。
「お前な…」
呆れる剛からノートを奪って、さっさと開け出す。剛は、しょうがないと嫌味ったらしくため息を吐いてから、歩き出した。一瞬、アイスミルクティーにしてやろうかとも思ったが、高遠のことだ。交換しろと言い出しかねないなと、剛は言われた通りに買い物をして、席に戻る。
----と。
「おはよう!」
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