「由岐人、上ケンカしてるの知ってる?」
剛は、いやもう楽しいと言わんばかりの顔つきで、由岐人に話しかけた。
「・・・あー」
こちらは逆に複雑な顔で、曖昧な返事を返す。
今日の朝食は簡単に、野菜入りのスクランブルエッグに、イングリッシュマフィン。キャベツと玉ねぎとソーセージのコンソメスープ。その、とても美味しく仕上がったコンソメスープを由岐人は苦いものでも飲むような顔で飲み込んで。
「この年末に、まったく・・・」
「でもさ、まぁどっちもどっち?」
「咲斗もやりすぎなんだよね」
「お!?それってダジャレ?」
ヤル?犯る?
「バカ!!」
ガツっと剛の向こう脛が蹴られた。
「痛っ」
「くだらないこと言うからだよ」
「それは由岐人が・・・いえ、なんでもありません」
また蹴られてはたまらないと、剛は慌てて足を引っ込める。
「とりあえず、早く仲直りするように言って」
「俺が?」
「そう」
「どうせ犬も食わないって」
「そうだけど、年末だし」
頭の上でケンカしたまま年を越されたくない。二人には、幸せであっていてほしいと思うから、どうでもいい、いつもなら放っておくケンカも、年末のこの時期はなんだか放っておけない。
新年は仲良く迎えて欲しいから。
きっと由岐人がそんな心配はしなくても、二人ならそうなるだろうけれど。
時々疼く負い目が-----------まだ。
「わーったよ。後で話してみる」
それでいいだろ?と剛はキャベツと卵をフォークで口に運びながら由岐人に言った。
由岐人は、剛のその"わかってる"らしい視線が上手くまだ受け止められなくて、下を向いたまま頷いた。
まだ、心の中まで分かられるのは、わかろうとされるのは、嬉しさよりも気恥ずかしさと、意地が先立ってしまう。
由岐人はいい加減つまらない意地だとわかりながらも、黙ってパンをかじった。